第7回 金賞作品紹介

「里山のジュース屋さん」  大川 蒼宙乃

里山のジュース屋さん

文・大川 蒼宙乃 絵・おぐら ひろかず

そよそよと流れる小川。
いねが青々とそだっている田んぼ。
おひさまの光が
きらきら差しこんでいる里山。

そこにある、
大きくてりっぱなコナラの木。

ここがぼくたちのお店、
コナラのジュース屋さんだよ。
樹液ジュースを売っているんだ。
ほら、あまずっぱい、いいにおいがするでしょ。

ぼくは、オオムラサキっていうんだ。
チョウの仲間だよ。
ねえ見て。
大きくて、きれいな羽があるんだよ。
すてきでしょ。

ぼくは、このお店のお昼の店長さん。

お店がひらくのは、おひさまがすっかり顔を出したころ。

ぼくがミーンミン合唱団の歌に合わせて、
ひらひらとおどっていると、お客さんがやってくるよ。

今日のお客さんは、カナブンとゴマダラチョウ。
あっ、あとスズメバチ。
スズメバチには気をつけてね。
おこると、あばれだすから。

まっ、ぼくはへっちゃらだけどね。
大きな羽をばたばたさせて、やっつけるからさ。

お昼は、樹液ジュースの配達もしているんだ。
スズメバチがこわくて
お店にこられないお客さんのためにね。
みんな、ぼくの配達を
とっても楽しみに待っているんだ。

樹液ジュースのお礼に花のみつをくれるよ。
この花のみつも、あまくておいしいんだよね。

さて、もうすぐお月さまの出番だね。
そろそろお店はおしまい。
また明日ね。
カブトムシくん、あとはよろしくね。

おれは、カブトムシ。
かっこいい長いつのを持っている。
この店の夜の店主だ。

店がひらく時間は、あたりが暗くなってから。

今晩の客は、クワガタ、カミキリムシ、ムカデが多いな。
今日もたくさんの客で大にぎわいだ。
大勢で飲む樹液ジュースは、栄養満点で本当にうまい。

腹いっぱい飲んだ後は、いつもじゅうどう大会が始まる。
今日は、ノコギリクワガタ対ミヤマクワガタ。
なかなかいい勝負だ。
どっちもがんばれよ。

今回勝ったのは、ノコギリクワガタ。
決め手は背負い投げか。
ノコギリのやつ強いな。
これで二度目の優勝だ。
まっ、おれにはかなわないけどな。
おれは、四度も優勝したことがある。
すごいだろう。
もちろん、このノコギリにも勝ったことがあるぞ。

さて、あたりが明るくなってきた。
店をしめるとするか。

今日は雨。
待ちに待った雨だよ。
雨の日はお店はお休みで、
いつもなら葉っぱの裏でのんびり過ごすんだけど、
今日はそわそわ。

だって、雨がふった次の日に
カブトムシくんと、ある事を計画しているんだ。
お腹をすかせたお客さんがたくさんくるから
ちょうどいいんだよ。

どんな計画かは、まだないしょ。
早く雨が止まないかな。

雨上がり、朝からぴかぴかのおひさま。
カブトムシくん、いそいで準備をしなくちゃね。

おひさまがまっ赤にそまったら、いよいよ始まるよ。

「みんな集まって! 夏祭りの時間だよ。」

それではまず、ミーンミン合唱団の歌に合わせておどるよ。
ぼくのまねをしておどってね。
ひらひら、ばたばた、ぶーん。
そうそう、カブトムシくんじょうずだよ。

次は、じゅうどうの技を教えてもらうんだ。
先生はカブトムシくん。
「こうやって、つのをひっかけるんだぞ。
つのがないやつは羽を大きくばたばたさせて。
そうだカナブン、いい調子だ。」
ぼくもやってみたけど、けっこうむずかしいね。
でも、みんな楽しそう。

いっぱい動いてお腹がすいたね。
こっちにジュースの屋台があるよ。
樹液ジュース屋さんと、花のみつ屋さん。
どっちもおいしいよ。
たくさんめしあがれ。

みんな喜んでくれているみたいでよかった。
大成功だね。



 


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「おいしい森のつくり方」  赤土 晴音

おいしい森のつくり方

文・赤土 晴音 絵・みやざき ひろかず

夏の日差しが照りつける朝のことです。
一人の男の子がワシャワシャと草をかきわけ、
森の中を探検していました。

しばらく進むと、
地面にポッカリと
巨大な穴があいているのを見つけました。
男の子は、そこにいたウサギには目もくれず、
あわてて家に帰りました。

家に着くとすぐに男の子は
台所にいるお母さんに、
「ねえねえお母さん、
どうしてあの森には穴があいているの?」
と、たずねました。

お母さんはボウルに小麦粉をいれながら、
「それはね、
宇宙人が隕石を落としちゃったからなのよ。」
と、言いました。
男の子は目をまるくしました。
すると、お母さんは話をはじめました。

まだ人間が誕生していないずっと昔、
宇宙では宇宙人がくらしていました。
宇宙人たちは、隕石を落とすのがお仕事です。

「センパイ、コノスイッチオシマスネ。」
一人の新米宇宙人がボタンにふれました。
「ン? ソノスイッチハ、チガウ。ソノトナリ。」
と先輩宇宙人が注意しようとしたそのとき、
ドォーンという音がなりました。
「スミマセン。モウ、オシマシタ。」
「ソノインセキニハ、ナカニタネガ
ハイッテイルノニ!」

男の子はお母さんに、
「じゃあ、どうしてまわりに森ができたの?」
と、続けてたずねました。

お母さんは、ボウルの中身をまぜながら
答えました。
「それはね、ミミズがはたらいたからよ。」

「今日もこの土をフカフカの土にかえるぞ。」
ミミズたちは、毎日一生けんめいはたらいています。
隕石の中のタネがたくさん落ちたために
土のおふとんを作るのに大忙しです。

お母さんは、まぜ終わった生地を取りだし、
こねながら男の子に言いました。
「ミミズだけじゃなくて
風や太陽、雲もがんばったのよ。」

風は、タネを遠くにとばします。
「ビュービュー。遠くまでとんでいけ!」

太陽は、たくさん光をあてます。
「がんばれ、がんばれ。はやく芽をだせ。」

雲は、雨を降らせます。
「いっぱい水をのんで、大きくなるのよ。」

男の子はテーブルに
ほおづえをつきながら、
足をブラブラさせて聞きました。
「でも木が大きくなるのに、
いっぱい時間がかかるよね。」

お母さんは生地の上にふきんをかぶせながら、
「芽がねている間、星たちが子守唄を歌ったのよ。」
と、言いました。

星たちは夜になると、優しい声で子守唄を歌います。
それを聞いた芽たちは、安心してぐんぐん成長し、
大きな木になりました。

お母さんは、生地を切って
オーブンにいれてから、こう言いました。
「あまったクルミを小鳥にあげておいで。」
男の子は庭へ行き、
小鳥にクルミをあげました。

リビングにもどってから
男の子は、たずねました。
「そのあと、木はどうなったの?」

お母さんはお皿を出しながら答えました。
「木たちは、みんなに感謝したのよ。」

木たちは、育ててくれたみんなに
「ありがとう。」
と、言いました。

そしてお礼に、おいしそうな木の実をつけ、
近くに花を咲かせました。
色とりどりの花たちがおどると、
みんなもからだをゆらしました。

男の子は、うれしそうにその話を聞きました。

すると、お母さんが
クルミパンをのせたお皿をもってきました。
「クルミパンできたわよ。」

男の子は急いで手を洗い、いすに座りました。
そして手をあわせて、こう言いました。
「いただきます。」


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