第8回 金賞作品紹介

小学生の部

「森のかけはし」  林 美羽

森のかけはし

森のかけはし

文・林 美羽 絵・みやざき ひろかず

森の中のどうくつに、
ムカデくんとミミズくんがひらいている
本やさんがありました。

「ああ、あついあつい。
外の気おんも、このへやもあつすぎる!
むかしは、このどうくつ本やにも、すずしさをもとめて
おきゃくがたくさんきてくれていたものよ。
それが今じゃあ、まっぴらこねえ。
どうしてこんなにあついんだ!
なあ、ミミズ!!」
「ぼ、ぼくに当たらないでくださいよ。
そうだ! 
ここにあるたくさんの本の中から、
何か見つかるかもしれません。
しらべてみるのはいかがでしょう。」
「おう! それはいい考えだ。」
それから……

「ムカデさん!
そのりゆうがわかりましたよ。
ぜんぶこの本にのっています。
『ちきゅうシリーズだい四かん・
ちきゅうおんだんかとどうくつのかんけい』。」
「これにどんなことが書いてあるんだ?
なあ、ミミズ。」
「はい。
いま、ちきゅうでは〝おんだんか〟と言って
ちきゅうぜんたいが、あつくなってきているようです。
それにともない、さいきんではここのどうくつも
あつくなってきているようです。」
「おんだんなんちゃらのせいで
おきゃくがこんなにへったって!?
だいたいそのおんだんなんちゃらって、どういうことだ?」

カランカラーン♪
「あっ、おきゃくさんだ!」

「いらっしゃいませ。
ヤギのおくさん、今日はどんな本をおさがしですか?」
「いいえ。
今日は本を読みにきたんじゃないの。
本を食べにきたの。」

「ええっ!
おくさん!!
それはどういうことですか!?
考えなおしてください。」
「今さら考えなおすなんてむりよ。
今、この森はとてもあつくなっているわ。」
「ええ、そうですよ。」
「森林ばっさいがすすみ、食べものがなくなって
うえじにしそうなくらいだわ。
わたしたちヤギは、まだがみを食べられるからいいけれど
ほかのどうぶつたちは、がみなんて食べられないから
人間のすむきけんな町にえさをもとめにいっている。
いのちをおとす生きものさえいるわ。グスン。」

「おくさん、さっきから紙のことを
がみと言っておりますが……。」
「ええ?
あーら、ごめんなさい。オホホホホ。
では、さっそく本をいただこうかしら。
もうおなかがペコペコよ。」

「ちょ、ちょっとまってください。
おちついてください。
先ほど、『ちきゅうシリーズ』の本を
見つけたのです。
いっしょにしらべて、
この森を生きかえらせてみませんか?」
「そして、その方ほうをじっこうするってわけだな。
なあ、ミミズ。」
「ええ、そうです。」

「本当にできるのかしら?」
「ぜったいにできますよ。」
「こういう時に本ってやくに立つんだぜ。
だから、食べちゃためだ。」

「では、これからがんばっていきましょう。」
「エイエイオー。」
みんなは、声をそろえて言いました。

『ちきゅうシリーズだい五かん・森のかけはし』を
読みすすめてみると……

「ほほう、かんしんかんしん。
なるほど。」
「さっそく、じっこうにうつしましょう。」
「そこに、わたしたちが考えたくふうをつけ足すってわけね。」
あんなに本を食べたがっていたヤギのおくさんもはりきっています。

さっそく、
それぞれ森のなかまたちをよんで
こうじをはじめました。
たくさんの木のなえをうえ、
花のたねをたくさんまきました。

やがて、木ぎがおいしげり、日かげができました。
木のみもふえ、おいしいフルーツがなりました。
小とりがさえずり、お花もたくさんさきました。
木ぎやお花のにおいにかこまれて、
なんだかとてもしあわせな気分です。

「さあ、さい後のしあげよ!」
みんなで森に、色とりどりのリボンをつなぎあわせました。
〝すてきな森が、えいえんにつづきますように″
と、ねがいをこめて。

その後、どうくつの中の本やさんは
森の生きものたちで、にぎわいをとりもどしました。
「今どは、おきゃくのねっ気でクラクラするぜ!
なあ、ミミズ。」
「それはそれでいいですね。」

カランカラーン♪
「いらっしゃいませ!
ヤ、ヤギのおくさん。
今日はどんな本をおさがしですか?
ま、まさか!?」
「やーねー。
今日は、りょうり本をさがしにきたのよ。
生きかえった森の木のみで、おいしいパイを
作るためにね。」



 


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中高生の部

「森の命の素晴らしさ」  増井 玲奈

森の命の素晴らしさ

森の命の素晴らしさ

文・増井 玲奈 絵・おぐら ひろかず

数年に一度、各地の森の代表が集まり、
自分達の森の素晴らしさを競う
森の自慢大会が取り行われています。

その大会は、樹齢何千年と言われている大木に集まり行われ、
一番素晴らしいとされた森には、更に素晴らしい森になるようにと、
『森のたね』が贈られます。

「今年は、北の森のキツネさんから
聞かせてもらいましょう。」
司会は、森の長老のフクロウです。

指名されたキツネは、
少し気取った様子で皆の中心に登場しました。

「北の森は、太古から残るアカエゾマツの森が生い茂り、
大小いくつもの神秘的な青い湖面の青池が存在します。
青と緑のコントラストの美しさは、どこの森にも負けません。」

キツネは、うっとりした表情で
自分の森の素晴らしさを皆に語りました。

二番手は、東の森のワシです。
ワシは、大きな翼を広げながらゆっくり登場します。

「東の森には、雄大な木々が立ち並び、
大自然に囲まれた大きな滝が存在する。
森は、四季によって違う景色を見せ、
自然と心が癒される素晴らしい森である。」

ワシは、自慢げにくちばしをツンと上げ、
皆を見下ろすかのように語りました。

三番手は、西の森のイノシシです。
イノシシは、自慢の牙をキラリと光らせ登場します。

「西の森の一番の自慢と言えば、
どこよりも澄んだおいしい空気だろう。
美しい渓流沿いには、カヤやアカガシなどの自然林が広がり、
美しい自然に包まれておる。」

イノシシは、どんなもんじゃとばかりに
皆を鋭い目で見回しました。

四番手は、南の森のウサギです。
でも、ウサギは皆と様子が違っていました。
立派な耳は垂れ下がり、なんだか元気がありません。

「南の森も皆さんの様に、素晴らしい森だったのです。」
「だった?」
司会のフクロウは、首をかしげました。

「梅雨の時期に降り続いた大雨で、
私達の森は何箇所も崩れてしまいました。
木々達は根を張り、踏ん張ろうと頑張りましたが、
降り続く雨には勝てませんでした。」

さっきまで偉そうに威張っていた森の代表達は、
ウサギの話を聞くと、皆下を向いて肩を落としました。

司会のフクロウが、静かにウサギに声をかけました。
「それは大変なことでしたね。」
ウサギはハッと顔を上げ、話を続けました。
「皆さん、ご心配をおかけする様な話をしてすみません。
でも、南の森は大丈夫です。
森の仲間で力を合わせ、元の森に戻る様に頑張っているところです。」

森の代表達はウサギの話を聞くと、顔を見合わせ皆でうなずきました。
北の森のキツネが言いました。
「『森のたね』は、南の森に贈ったらどうでしょう。」
東のワシも、西のイノシシも、うなずいて言いました。
「それが一番いいでしょう。」

「森は、生きる物すべての宝です。
どうか『森のたね』を使って、
早く元の素晴らしい森をよみがえらせて下さい。」
フクロウは、ウサギに『森のたね』を贈りました。

「皆さん、ありがとうございます。」
ウサギは、森の代表達に礼を言うと、
『森のたね』を大切に抱いて南の森へ帰りました。

南の森がまた素晴らしい景色を取り戻すことを願って、
他の森の代表達も自分の森へと帰って行きました。

数日後、南の森で新しい命が芽を出しました。


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