外部調査委員会による調査結果
(2018年3月6日時点)
当社は、不適切行為の判明後、2017年10月25日までに行ってまいりました事業部門及びグループ会社による品質自主点検や本社による緊急監査などに基づき確認・認識した主な事実を、2017年11月10日付け「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」において公表いたしました。
今般、外部調査委員会の調査結果を受けて、2018年3月6日付報告書により公表いたしました主な事実は以下の通りです。
(1)不適切行為の範囲および性質
当社グループにおける不適切行為は、具体的には、例えば、顧客仕様を満たさない検査結果を満たす数値に改ざんする行為、実際に測定が行われていないにもかかわらず、測定したかのように試験結果をねつ造する行為などです。
下表のとおり、このような不適切行為は、アルミ・銅事業部門のみでなく、その他の事業部門や当社グループ会社でも行われていたものであり、当社は、当社グループの多くの拠点で行われていた事実を重く受け止めております。
アルミ・銅事業部門 本体 | お客様数(社) | ||||
---|---|---|---|---|---|
事業所 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
真岡製造所 | アルミ板 | 缶材 自動車 |
57 | 7 | |
大安工場(2017年11月10日付で大安製造所) | アルミ鋳鍛造部品 | 航空機 鉄道車両 |
67 | 4 | |
長府製造所 アルミ押出工場 | アルミ押出品 | 自動車 鉄道車両 |
34 | - | |
長府製造所 銅板工場 | 銅板 | 半導体 端子 |
38 | 2 | |
アルミ・銅事業部門 グループ会社 | |||||
会社名 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
(株)コベルコ マテリアル銅管 | 銅管 | 空調 | 23 | 88 | |
神鋼メタルプロダクツ(株) | 銅合金管 モールド |
電機 製鉄機械 |
176 | 29 | |
神鋼アルミ線材(株) Kobelco & Materials Copper Tube (M) Sdn. Bhd. Kobelco & Materials Copper Tube (Thailand) Co., Ltd. 蘇州神鋼電子材料有限公司 |
アルミ線材 銅管 銅板条 |
空調 端子 |
36 | - | |
神鋼真岡総合サービス(株) | アルミ板 | 材料試作 | - | 1 | |
鉄鋼事業部門 本体 | |||||
事業所 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
高砂製作所 鉄粉工場 | 鉄粉 | 焼結部品 | 1 | - | |
鉄鋼事業部門 グループ会社 | |||||
会社名 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
日本高周波鋼業(株) 神鋼鋼線ステンレス(株) 江陰法爾勝杉田弾簧製線有限公司 神鋼新确弾簧鋼線(佛山)有限公司 |
鋼線 ステンレス線 熱処理 |
軸受 ばね |
22 | - | |
神鋼鋼板加工(株) | 厚板加工 | 厚板加工品 | 1 | - | |
(株)カムス | 熱処理 | 熱処理 | - | 1 | |
機械事業部門 本体 | |||||
事業所 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
汎用圧縮機工場 産業機械事業部 高機能商品部 |
機械 | 産業機械 汎用圧縮機 |
- | 10 | |
機械事業部門 グループ会社 | |||||
会社名 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
神鋼造機(株) | 機械 | 産業機械 | - | 3 | |
本社部門 グループ会社 | |||||
会社名 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
(株)コベルコ科研 | ターゲット材 試作合金 腐食分析 |
FPD 光ディスク 試作合金 腐食分析 |
70 | 14 | |
エンジニアリング事業部門 グループ会社 | |||||
会社名 | 製品 | 主な用途 | 17.10.26 公表 |
17.10.26 以降 |
|
(株)神鋼環境ソリューション | 水分析 | 水分析 | - | 4 |
(2)原因分析
2017年10月26日以降、外部調査委員会による調査が行われました。これらの結果を総合すると、本件のような事態を引き起こした直接的な原因を以下の3つと整理しました。
- 直接的原因
-
- 1工程能力に見合わない顧客仕様に基づいて製品を受注・製造していたこと
- 2検査結果等の改ざんやねつ造が容易にできる環境であったこと
- 3各拠点に所属する従業員の品質コンプライアンス意識が鈍麻していたこと
そして、その背景にある根本的な原因は、以下の3つに集約できると考えております。
- 根本的原因
-
- 1収益偏重の経営と不十分な組織体制
- 2バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
- 3本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続
(3)再発防止策
上記の原因分析に基づき、 当社が取りまとめた本件不適切行為に対する再発防止策は以下のとおりです。
再発防止策の概観
- Ⅰ ガバナンス面-品質ガバナンス体制の構築
-
- 1グループ企業理念の浸透
- 2取締役会のあり方
- 3リスク管理体制の見直し
- 4事業部門の組織再編
- 5グループ会社の再編
- 6事業部門間の人事ローテーションの実施
- 7現場で生じる諸問題の掌握
- 8品質憲章の制定
- 9品質保証体制の見直し
- 10事業管理指標の見直し
- Ⅱ マネジメント面-品質マネジメントの徹底
-
- 1品質マネジメントの対策
- 2品質保証担当人材のローテーションと育成
- 3品質に係る社内教育
- 4本社による支援策
- Ⅲ プロセス面-品質管理プロセスの強化
-
- 1試験・検査データの不適切な取り扱い機会の排除及び出荷基準の一本化
- 2工程能力の把握と活用(素材系)
- 3新規受注の際の承認プロセスの見直し
- 4製造プロセス変更時の承認プロセスの見直し
- 5設備投資における品質リスクアセスメントの推進
Ⅰ ガバナンス面-品質ガバナンス体制の構築
- 1. グループ企業理念の浸透
2017年4月にスタートした「Next100プロジェクト」について、不足している部分を補強しつつ、より強化していくことで、グループの価値観や品質問題に対する当社の姿勢がグループの全社員に共有され、共感されることを目指していく。
- 2. 取締役会のあり方
品質に関するガバナンスを強化するとともに、取締役会の公正性と透明性をより向上させることを目的として取締役の構成を変更し、独立社外取締役の構成比を3分の1以上にするほか、「指名・報酬委員会」を設置する、会長職を廃止し、独立社外取締役の中から取締役会議長を選出する、全事業部門長を取締役とする構造を見直し、リスク管理、品質を総括する取締役を配置するなど、取締役会としてのモニタリング機能を強化する。
- 3. リスク管理体制の見直し
リスク管理活動の実効性を確保するため、現状のリスク管理活動を見直す。具体的には、コンプライアンス意識調査アンケートを定期的に実施する、「グループ標準」を定め、すべてのグループ会社がこの標準に沿って自社の規程を整備する体制とする、コンプライアンス統括部を設置するなどの対策を行う。
- 4. 事業部門の組織再編
不適切行為が長年続いてきたアルミ・銅事業部門の各ユニットの閉鎖性と、品質管理レベル及び組織風土を改善するため、品質管理システムの見直しと社員の意識改革を進める。従来の金属種類による事業形態から需要分野戦略による事業形態に変革していく。
- 5. グループ会社の再編
本社から各グループ会社に対する支援・管理が、よりきめ細やかに行える体制づくりやグループ会社の体質強化を目的として、グループ会社の再編を進めていく。
- 6. 事業部門間の人事ローテーションの実施
今回の品質問題の原因の1つである組織の閉鎖性(人の固定化)を防ぐために、閉鎖的な組織の体質を意識的に改善し、組織の付加価値を高め、正しい方向にリードできるマネージャー、経営者を育成する。
- 7. 現場で生じる諸問題の掌握
経営幹部が「自らの思いを伝える」だけでなく、「積極的に生の声を聴く」ため、経営幹部が社員に直接語りかける場を設ける。また、「社員意識調査」を実施する。「品質キャラバン隊」を結成し、国内外の事業所・拠点訪問を定期的に行う。
- 8. 品質憲章の制定
「品質憲章」を新たに定め、神戸製鋼グループで働くすべての者が共有し、信頼回復に取り組んでいく。
- 9. 品質保証体制の見直し
製造所・工場、事業部門、本社という3つの階層別に品質保証体制を強化する。品質統括部を担当する執行役員を設置する。
- 10. 事業管理指標の見直し
これまでの「収益評価に偏った経営」を改め、「持続的な企業価値向上を実現するため」に、リスクの早期把握と適切な対応を可能とする目標や指標を踏まえた経営を行う。
Ⅱ マネジメント面-品質マネジメントの徹底
- 1. 品質マネジメントの対策
品質ガイドラインによる事業所の品質保証マネジメントの強化、品質統括部を事務局とするグループ品質リーダー会議の開催等を実施する。
- 2. 品質保証担当人材のローテーションと育成
品質保証担当人材を全社共通の専門人材と位置付け、事業部門横断的な人材のローテーションや育成を行う。
- 3. 品質に係る社内教育
品質に係る当社グループで働く全ての人を対象とした社内研修を実施し、「品質憲章」の共有、共感を図る。
- 4. 本社による支援策
品質統括部による監査を実施するとともに、本社の専門人材による「品質キャラバン隊活動」により現場の問題解決を支援する。
Ⅲ プロセス面-品質管理プロセスの強化
- 1. 試験・検査データの不適切な取り扱い機会の排除及び出荷基準の一本化
試験・検査記録の自動化を進めるとともに、データ入力の一人作業をできるだけなくす。また、出荷基準の一本化により、二重の出荷基準(顧客仕様と社内基準)に起因する不適切行為の機会を排除する。
- 2. 工程能力の把握と活用(素材系)
工程能力指数等の品質特性のばらつき度合いを、受注可否判断に使用する。
- 3. 新規受注の際の承認プロセスの見直し
お客様の要求事項と齟齬が生じないよう、開発から量産化完了までの各段階における設計開発審議(Design Review)等の適切な承認プロセスを経て受注可否を決定する。
- 4. 製造プロセス変更時の承認プロセスの見直し
品質に影響を及ぼす4M(人、設備、材料、方法)の変更時における承認プロセスの見直しを図る。
- 5. 設備投資における品質リスクアセスメントの推進
品質リスク低減の観点を加えた投資基準を導入する。
*2018年3月6日付「当社グループにおける不適切行為に関する報告書」 全文は下記リンクをご参照ください。