2005~2025年度の歩み

6

20212023年度

確立

― 新たなグループ企業理念のもと、サステナビリティ経営に邁進 ―

1

マテリアリティの特定と持続的な成長に向けた取組み

2021~2023年度の世界と日本 新型コロナ禍の終息と資源高騰

2021年、新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックは続いていた。2023年5月に世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」宣言を終了した時点で、感染者は7億6,500万人、死者は700万人近くに達した。各国の経済対策やワクチン普及により、世界経済は2021年から回復に向かったが、2022年2月、ロシアがウクライナに軍事作戦を開始し、2023年10月にはイスラム組織/ハマスによるイスラエル攻撃も発生。特にロシアによるウクライナ侵攻は、天然ガスや原油、石炭、鉄鉱石、非鉄金属(銅・錫・ニッケル)等の高騰につながった。2022年10月に一時1ドル150円台となった円安進行も重なり、原料輸入コストは大幅に増大した。

2021年7~9月の「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」は新型コロナウイルス感染症の影響で無観客開催となったが、日本経済は同年から持ち直し、2023年まで3年連続でプラス成長となった。

地球温暖化問題については、2021年4月、菅義偉首相が2030年度までに温室効果ガスの削減目標を2013年度比で46%とする新たな目標を表明した。同年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画でも、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向けたエネルギー需給構造の抜本的転換と、2030年度目標達成に向けた電源構成の見直しが行われた。2021年11月のCOP26では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃以内に抑える「1.5℃目標」の実現に向けた温室効果ガス排出削減の加速や石炭火力発電の段階的削減等が合意された。

事業活動とESGの一体化を目指し、2つの最重要課題に取り組む

「2021~2023年度 KOBELCOグループ中期経営計画」は、中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION“G+”」(2016~2020年度)で目指した素材系・機械系・電力の「3本柱の事業体確立」にはまだ至っていないとの認識のもと、コロナ禍の最中に策定された。

策定に際しては、CNへの移行・社会変革、サステナビリティの潮流加速、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、コロナ禍を契機とした産業構造の変化、鉄鋼業界の構造的問題といった環境が認識されていた。当社は、これらの環境変化を対応すべき課題であると認識するとともに、多様な事業・技術・人材の総合力を通じて社会に貢献するビジネスチャンスとして捉えた。そのうえで、「安定収益基盤の確立」と「CNへの挑戦」を取り組むべき最重要課題とし、これを軸に価値創造領域と経営基盤領域に分けて基本戦略を定めた。

【価値創造領域】

安定収益基盤の確立

収益性目標の達成へ5つの重点施策を推進するものとした。

  1. 鋼材事業の収益基盤強化
  • 長期的に内需減少が進む想定の中、粗鋼生産量630万t/年の前提で安定収益を確保できる体制を構築
  1. 新規電力プロジェクトの円滑な立上げと安定稼働
  • 神戸発電所1・2号機、真岡発電所1・2号機の安定稼働に加えて、神戸発電所3・4号機の営業運転を開始し、2023年度から400億円程度/年の収益を確保
  1. 素材系事業 戦略投資の収益貢献
  • 自動車軽量化に関する戦略投資は、需要拡大時期の後ろ倒し、ものづくり力の課題等はあるが、早期の収益貢献を実現
  1. 不採算事業の再構築
  • 2019年度に固定資産減損を行った鋳鍛鋼事業及びチタン事業、赤字が継続しているクレーン事業は、合理化により2021~2022年度にかけて黒字化を実現
  1. 機械系事業 収益安定化と成長市場への対応
  • 機械事業・エンジニアリング事業は、CO₂削減等の環境貢献メニューを拡充し、グループ内連携を促進しながら、成長市場への取組みを積極化
  • 建設機械事業は、収益構造の中国市場依存脱却、建設業界の働き方変革等のソリューションを提供する「コト」ビジネスの収益化等の建設機械周辺ビジネスの事業化を推進

CNへの挑戦

当社グループは2050年のCNへ挑戦し、その移行の中で、企業価値の向上を図る。独自技術の開発推進や外部の革新技術活用等による「生産プロセスにおけるCO₂削減」及びCO₂排出削減に貢献する多様なメニューと多様な技術の融合による「技術・製品・サービスによるCO₂排出削減貢献」の2つの側面で2030年目標及び2050年ビジョンを設定した。

  2030年目標 2050年ビジョン
生産プロセスにおけるCO₂削減 30~40%
(2013年度比※1
CNへ挑戦し、達成を目指す
技術・製品・サービスによるCO₂排出削減貢献※2 6,100万t
(うちMIDREX™4,500万t以上※3
1億t以上
  1. 削減目標の対象範囲の大半が製鉄プロセスでの削減。2020年9月公表時から見直し(BAUベースから総量ベースへ変更したうえで、当社独自ソリューションの活用拡大を加味)。
  2. 当社グループ独自の技術・製品・サービスを通じて社会の様々な分野でCO₂排出削減に貢献。
  3. 2020年9月公表時の算定式を見直し。

【経営基盤領域】

「安定収益基盤の確立」と「CNへの挑戦」を実現するため、経営体制の見直しに加え、信頼向上プロジェクト、DX戦略、多様な人材の活躍等のESGを中心とした取組みを推進し、経営基盤の強化を継続

これらの戦略に加え、事業別の稼ぐ力を明確化し、収益性と効率性をさらに追求する目的で、これまで収益指標としていたROA(総資産利益率)に替えてROIC(投下資本利益率)を用いることとした。2023年度にはROIC5%以上の収益レベルを確保、将来の姿として「ROIC8%以上を安定的に確保し、持続的に成長するKOBELCOへ」を掲げた。

財務体質の強化に向け、新規設備投資・投融資を厳選したうえで、投資キャッシュ・フローを営業キャッシュ・フローの範囲内で実施するものとした。意思決定ベースの設備投資は年間1,000億円レベルに抑制。2023年度末にはD/Eレシオ0.7倍以下を目指した。

株主還元方針は、継続的・安定的な実施を基本に、当社の財政状態、先行きの資金需要、各期の業績及び配当性向等を総合的に勘案して決定するとした。2021・2022年度は15~25%を継続、2023年度以降は引き上げも含めた見直しも行うとした。

さらに、サステナビリティ経営の推進に向け、当社グループの「マテリアリティ(中長期的な重要課題)」を特定して公表した。ESG外部評価やSDGsを意識しながら、グループ企業理念に基づくサステナビリティ経営を推進することで、すべてのステークホルダーの皆様にとって「かけがえのない存在」であり続けるとともに、持続的な成長と企業価値向上を目指した。

当社グループのマテリアリティ(2021年時点)

フォローアップの実施と現状認識の見直し

この期間においては、情報発信強化の一環として進捗状況をフォローアップし、毎年春の中期経営計画進捗説明会で対外的に報告を行った。

2022年度には、事業環境に対する現状認識として、ロシアのウクライナ侵攻等に伴う調達コストアップとサプライチェーンリスクを新たに追加した。そのうえで、こうした急激な環境変化の中で持続的成長と中長期的な企業価値向上を追求していくために、安定収益基盤を確立し、財務体質を強化することを通じた「資本コストの低減」と、CNへの取組み強化を通じた「成長市場への対応」について、個々の施策を峻別・明確化したうえで、並行して実施していくものとした。

また、事業ポートフォリオの変革に向けて、ROICと市場成長率を指標にグループの各事業を4象限(事業の拡大、シェア・収益性の維持、収益性の改善・方向性の見極め、構造改革による収益力向上の見極め)に位置付け、その進捗状況についても毎年開示を行った。2022年度中期経営計画進捗説明会時点の2023年度想定でROIC未達・低成長市場にあったショベル事業や、ROIC未達ながら高成長市場に位置していたアルミ板・押出・鋳鍛・サスペンション事業については構造改革を含めて収益性向上策を再検討して推進するとした。ROIC目標達成が見込まれた鋼材、溶接、チタン及びクレーン事業等については、更なる体質強化を進め、ROIC目標を達成し、かつ高成長市場に位置していた産業機械、汎用圧縮機事業、(株)神鋼環境ソリューションは、社外アライアンスや完全子会社化によるシナジー効果の追求等を図って、より収益力を高めていくことを目標とした。

事業ポートフォリオ(2022年度中期経営計画進捗説明会時の2023年度想定)

HISTORY