第1節
「魅力ある企業への変革」を果たし、成長施策の刈り取りを目指す
2024~2025年度の世界と日本 不透明さを増す世界と日本
2024年は、欧米経済が堅調に推移した一方、中国では不動産バブル崩壊の影響が長引き、経済停滞が続いた。2025年1月、再任したドナルド・トランプ米大統領は保護主義的なスローガンのもと、関税引き上げを含む通商政策を通じて各国との交渉を進めたことで、国際社会はサプライチェーンの再構築を迫られた。ウクライナやガザで停戦への取組みは進んだものの、終結に至らなかった。
地球温暖化問題では、国際機関や専門家の間でパリ協定の目標達成が困難との見方が強まり、2025年5月には世界気象機関(WMO)が「今後5年間のうち少なくとも1年が、産業革命前より1.5℃以上高くなる確率は86%」と発表するなど、より切迫度が高まる状況となった。
日本経済は、2024年3月に長年にわたるマイナス金利政策に終止符を打ち、正常化への舵を切った。しかし、記録的な物価高に対する実質賃金の伸びが遅れたことで内需は低迷。同年度の実質経済成長率は、ゼロ成長に近い水準まで落ち込んだ。米国の関税政策については、2025年7月に、①自動車と相互関税の税率15%(EUと同率)、②米国産農産品の購入拡大、③官民による5,500億ドルの対米投資の約束、を柱とする日米間の枠組み合意が成立した。関税問題収束やハイテク関連への投資増、輸出企業の業績改善への期待、こうした通商環境の安定化や政策動向を背景に、2025年11月には日経平均株価が当時の史上最高値となる5万2,636円を記録した。
この間、生成・自律AI(人工知能)活用の本格化や外国人労働力の受け入れ等、社会に影響を与える動きも進展した。
急激な環境変化でも成長できる企業体へ
2024年4月、山口貢社長に代わり、勝川四志彦が第22代社長に就任した。勝川社長は、デジタル化や脱炭素化等の急激な環境変化をピンチではなく成長の機会と捉え、これまで以上に魅力ある企業へと変革していくために、グループ社員全員に「『Team KOBELCO』の一員として『未来に挑戦できる事業体』を創りあげていこう」と呼びかけた。

第21代山口社長(左)から第22代勝川社長へ交代
2024年5月には、「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」が公表された。2024~2026年度の3年間を「魅力ある企業への変革」を果たし、「未来に挑戦できる事業体」(2030年度に売上高3兆円、経常損益2,000億円、ROIC8%を安定的に確保)となるための「成長施策の刈り取り」を行っていく期間と位置付けた。
最重要課題は「稼ぐ力の強化」と「成長追求」及び「カーボンニュートラル(CN)への挑戦」とし、各事業別の取組みを以下のようにした。
- 素材系事業:「稼ぐ力の強化」に重点的に取り組み、グローバルで収益性を向上。ROIC目標は6~8%
- 機械系事業:外部環境変化をビジネスチャンスとした「成長追求」。ROIC目標は8~10%
- 電力事業:前中期経営計画で確立した安定収益への貢献を継続。ROIC目標は10%以上
また、最重要課題に向けた重点施策を次のとおり設定した。
「稼ぐ力の強化」(素材系事業):将来の外部環境を見据えた「事業基盤の再整備」
- アルミ板・アルミ素形材の事業再構築
ベース収益改善に加え、アルミ板は自動車パネル事業の再構築を、アルミ素形材では北米事業の再構築を推進し、両分野ともに2024年度の黒字化を目指す - グローバルでの競争力維持
鉄鋼・溶接では、対象地域や各地域の生産体制の見直し等の体制再整備を進める
成長追求(機械系事業):「新たな需要の捕捉」「事業の幅の拡大」による成長
- エネルギー転換等の新たなビジネスチャンスの獲得
機械事業:圧縮機事業での受注獲得に加え、半導体検査装置やIP(等方圧加圧装置)事業での拡大を目指す
エンジニアリング事業:還元鉄需要の増加を捕捉するとともに、廃棄物処理・水処理事業を伸長させる - コト売り・ソリューションビジネスへの展開
これまでの事業活動で培ってきた情報・技術・ノウハウとDX関連技術をかけ合わせることで、コト売り・ソリューションビジネスの強化を進める
CNへの挑戦
- 生産プロセスのCO₂削減 製鉄プロセス
高炉へのHBI(Hot Briquetted Iron:熱間成形還元鉄)多配合や各種省エネ施策等の実行を進めるとともに、高級鋼製造が可能な大型革新電炉の検討を加速する - 生産プロセスのCO₂削減 電力事業
神戸発電所1・2号機でのアンモニア20%混焼に向けた取組みを進める - 技術・製品・サービスによるCO₂排出削減貢献
2030年度目標について、機械系事業の成長を踏まえて7,800万tに上方修正。CO₂排出削減貢献製品の売上高も2030年度5,500億円を目指す
変革(KOBELCO-X)を通じたサステナビリティ経営の強化
事業戦略実現に向け、変革(KOBELCO-X)を通じてサステナビリティ経営を強化する。AX(「既存事業の深化」×「新規事業機会の探索」という「両利きの経営」)とGX(「グリーン・トランスフォーメーション」)を事業戦略の両輪とし、これらを実現するためのドライバーとして、5つのX(BX「業務変革」、CX2「お客様対応変革」、DX「デジタル・トランスフォーメーション」、EX「人材戦略・従業員体験向上」、FX「ものづくり変革・工場変革」)を推進する。
加えて、事業存立の大前提となる安全、品質、コンプライアンス、ガバナンス等の経営基盤の強化にも継続的に取り組む。
財務目標では、収益性指標としてROICで6%程度を安定的に確保し、好環境下では8%到達を、安全性指標として純資産比率で40%台前半、グロスD/Eレシオ※1で0.7倍台半ばを目指すとした。また、2024~2026年度累計で5,000~6,000億円の営業キャッシュ・フローの確保を計画し、CN対応投資や重点施策関連投資、人的資本関連投資、DXを含む合理化・更新投資等、積極的な投資計画を進めることとした。
株主への還元は継続的かつ安定的な実施を基本に、配当性向として2023年度に引き上げた目安の30%程度の継続を掲げた。
- この中期経営計画よりグロスD/Eレシオについて、プロジェクトファイナンスを含む有利子負債ベースに変更。

KOBELCO-X相関図
米国の関税政策等の環境変化を織り込む
2025年5月の「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)進捗説明会」では、計画した取組みはおおむね順調に進捗している一方で、当社グループを取り巻く事業環境は計画策定時から大きく変化しており、建設機械事業や鉄鋼事業では厳しい事業環境が継続する見通しであることに言及している。
具体的には、①素材系需要の低迷長期化、②保護主義の台頭、③CN潮流の減速感(エネルギー・石化関連は堅調)、④インフレ加速(需要低下、投資コスト高騰)であり、特に保護主義台頭を象徴する米国の関税政策(2025年4月発表、日本は8月から15%の相互関税が適用)については、鉄鋼・アルミ板・建設機械等の直接輸出、自動車関連等の間接輸出、アジアにおける米国関連ビジネスの停滞等の影響を想定する一方、米国現地法人の収益はプラスに変動する可能性があるとした。
第7章
2024-2025年度
変革 ― 未来に挑戦できる事業体を目指し、KOBELCO-Xを推進 ―