R&D神戸製鋼技報

Vol.75, No.1 / Jun. 2026 通巻第254号

Online edition:ISSN 2188-9013
Print edition:ISSN 0373-8868

特集:鉄鋼・アルミ素材におけるKOBELCOのCO₂削減貢献技術・製品

記事ごとのPDFファイルは、下記からダウンロード可能です。

目次

01(巻頭言)「鉄鋼・アルミ素材におけるKOBELCO のCO₂削減貢献技術・製品特集」の発刊にあたって

P.01 坂本浩一

【冒頭】
 世界は今,気候変動への対応,エネルギー需給構造の変化,地政学リスクの顕在化,技術革新の加速といった要因が複雑に絡み合い,将来の予見がこれまで以上に難しい,不確実性の高い時代にある。とりわけ気候変動問題は,環境分野にとどまらず,産業競争力や社会基盤のあり方を左右する重要なテーマとなり,脱炭素化は国や地域を超えた共通課題として定着しつつある。(続きは左上のダウンロード)

02(解説)低CO₂高炉鋼材“Kobenable® Steel”,低CO₂アルミ“Kobenable® Aluminum”の商品化について

P.03 末次太陽・羽根川 智

【要旨】
日本は政府の温室効果ガス(GHG)削減目標として2030年に2013年対比46%削減,2050年にカーボンニュートラル達成を掲げている。それを受けて,多くの企業がGHG排出削減に向けた検討に着手している。当社も2030年に2013年対比30%~40%,2050年カーボンニュートラルの達成という削減目標を設定した上で,鉄鋼事業およびアルミ事業それぞれでのカーボンニュートラルに向けたロードマップを策定し,CO₂削減施策を推進している。お客様でもサプライチェーン全体での脱炭素化の観点から,低CO₂材料の調達に関する検討について着手しており,今後そのニーズが急速に伸長する可能性がある。当社は低CO₂高炉鋼材“Kobenable® Steel”および低CO₂アルミ“Kobenable® Aluminum”を既に市場投入している。これら商品の特長を紹介する。

03(技術資料)HBI超多配合装入による高炉の低コークス比・低CO₂操業技術の開発

P.07 燒谷将大・笠井昭人・坂本 充・宮田健士朗・田川智史

【要旨】
KOBELCOグループは中期経営計画の最重要課題の一つに,“カーボンニュートラルへの挑戦”を掲げている。生産プロセスにおけるCO₂削減に関し,2030年目標は“2013年度比で30~40%削減”であり,2050年ビジョンは“カーボンニュートラルへ挑戦し,達成を目指す”である。そこで,鉄鋼アルミ事業部門において最大のCO₂排出源である高炉のCO₂排出量を大幅削減すべく,加古川製鉄所第3高炉においてHBI(Hot Briquetted Iron)超多配合装入によるCO₂削減技術の実証実験を実施した。技術課題は高炉下部の通気性悪化と炉熱変動の増大であり,実証実験時には当社独自の高炉操業技術を適用した。その結果,大型高炉でHBI=440 kg/THMの超多配合装入により還元材比=386 kg/THM,コークス比=230 kg/THMの世界最小水準を達成し,CO₂排出量の25%削減(2013年度比)に成功した。

キーワード

製銑高炉CO₂排出量削減HBI

04(解説)鉄鋼業のCO₂削減に貢献するMIDREX™プロセス

P.14 生田翔士・畠山泰二・出浦哲史

【要旨】
MIDREX™プロセスは,低炭素で直接還元鉄(DRI)を製造できる製鉄方法として,世界中から関心を集めている。MIDREX™プロセスには,天然ガスを還元剤とする「MIDREX NG™」,天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることが可能な「MIDREX Flex™」,水素を100%還元剤として用いる「MIDREX H₂™」の三つのメニューを有している。本プロセスは段階的な水素導入や既設設備の活用が容易であるため,地域ごとに異なるグリーン水素の供給状況やエネルギー政策に応じて柔軟な対応が可能であり,最適なソリューションを提案することができる。本稿では,MIDREX™プロセスの特徴や水素移行におけるCO₂削減への貢献,また還元条件を変化させたラボ試験による製品DRIの評価結果について解説する。

05(論文)スクラップ利用拡大を目的とした脱りん炉反応効率の改善

P.20 對馬 卓・大内慶太・中須賀貴光・大谷真也・岩﨑眞澄・足立毅郎

【要旨】
加古川製鉄所のCO₂発生量削減を目的として,脱りん炉でのスクラップ利用拡大に着目し,その前段階として,脱りん反応効率向上に取り組んだ。化学工学的な観点より,(1)溶銑/スラグ反応界面へのりん移動の促進,(2)スラグ巻き込み促進による反応界面積増加が有効と考え,脱りん炉における底吹ガス吹込手法(底吹パターン)の改善を試みた。まず,事前検討として水モデル実験により,内側羽口からのガス吹込流量が外側より大きい状態を,外側と均等に変更することがコンセプト実現に有効であることを確認した。ついで脱りん炉での実証試験により,狙いどおり,反応効率が向上することを確認した。本結果に基づき,脱りん炉の底吹パターン改善を進め,2025年3月に実装を完了した。

06(論文)高濃度マグネシウム添加によるアルミニウムスクラップ精製の基礎検討

P.25 山口勝弘・小森康平・加藤謙吾・小野英樹

【要旨】
本研究では,高濃度マグネシウム添加によるアルミニウムスクラップ中の不純物除去技術について基礎的検討を行った。アルミニウム溶湯にマグネシウムを高濃度添加し,低温で短時間保持することで,Fe,Mn,Si,Crを含む化合物が初晶として生成し,不純物濃度が低減されることを実験的に確認した。また,生成化合物の沈降を利用して上層部のみを回収する手法を適用したところ,JIS A5052合金に対してCr濃度の低い溶湯が得られた。さらに,活量係数に基づく熱力学解析により,不純物除去挙動について理論的な裏付けを与えた。これらの結果より,本手法は短時間処理で複数の不純物を同時に低減し得る可能性を有しており,アルミニウムスクラップの高品質化に向けた基盤技術として期待される。

07(解説)拠点別・製品別GHG排出量を管理する「CO₂データ集計システム」の開発

P.31 池田英生・重杉 豪・中尾浩和・友田聖也・吉田康将

【要旨】
2050年カーボンニュートラル達成に向けて,より客観的で透明性の高いGHG排出量管理が求められつつあるなか,当社では全社共通のGHG排出量管理基盤である「CO₂データ集計システム」の開発に取り組んでいる。これは算定ルールやデータ粒度の異なる多様な事業拠点に適用可能で,将来の算定ルール変更にも柔軟に対応でき,また,第三者認証も踏まえて入力データや計算ロジックのトレーサビリティ管理が可能なシステムである。本稿では,「CO₂データ算出システム」の開発背景とアーキテクチャについて解説し,今後の活用を展望する。

08(解説)鉄鋼スラグ製品によるCO₂削減への取り組み

P.36 森 英一郎・松元弘昭・牧 剛司

【要旨】
鉄鋼スラグは鉄鋼製造工程で発生する副産物であり,従来路盤材やセメント原料として活用されてきた。これまでも高炉スラグ微粉末はコンクリートのセメント代替材として利用され,CO₂排出量削減に貢献している。本稿では,高炉スラグ微粉末を用いた既存のCO₂削減事例に加え,地盤改良や藻場造成材など新たな用途による環境効果について紹介する。既存製品である高炉スラグ微粉末の提供だけでなく,製鋼スラグを用いた地盤改良の普及促進,さらに海藻育成基盤としての活用を通じて,鉄鋼スラグ製品による持続可能な社会へ貢献していく。

09(論文)1,600 MPa級省合金高強度ボルト用鋼の開発

P.40 松本洋介・安居尚志・内田辰徳・千葉政道

【要旨】
自動車のエンジン軽量化・高効率化に伴い高強度ボルトの需要が高まっており,遅れ破壊特性の確保が課題である。本研究では,Moを使用せずSiを積極的に添加し,セメンタイトの析出・成長を抑制することで微細炭化物を安定化させ,強度・じん性の両立と遅れ破壊を抑制する省合金高強度ボルト用鋼を開発した。テストピース評価により,Si添加量の増加に伴いぜい化発生に必要な水素量が増加し,引張強度1,600 MPa級まで耐遅れ破壊性を維持できることを確認した。さらに,ボルト試作評価では成形性が良好であり,耐遅れ破壊性試験においても高強度域で優れた特性を示した。本鋼種は自動車エンジン向けボルト用として使用されており,資源節約とカーボンニュートラル推進への貢献も期待できる。

10(論文)非調質コンロッド用鋼の被削性に及ぼすCaの影響

P.45 大脇章弘・山本雄也・杉村朋子

【要旨】
当社では,熱間鍛造用非調質鋼で世界最高レベルの強度と被削性を両立したかち割りコンロッド用鋼を開発した。本開発鋼では,サーメット工具を用いた旋削加工において,高強度化に伴う被削性の悪化を抑制するためにCa量を制御している。これまでの研究では,Ca添加による工具摩耗の抑制は,すくい面に対して効果があるとされているが,開発鋼は逃げ面でこの効果が認められている。そこでSEMとTEMを用いて,旋削工具刃先の摩耗具合い,付着物の有無やその組成を詳細に調査し,逃げ面における工具摩耗の抑制メカニズムについて考察を行った。その結果,①旋削加工中に付着物が逃げ面側に流動し,その過程においてトライボケミカル摩耗を抑制,②Ca系酸化物が工具中のバインダ相中成分の拡散を防止し,バインダ相の劣化を抑制することで,サーメット工具中の硬質粒子の欠落を抑制,の二つの要因を明らかにした。そして,これらの効果が重畳して,工具摩耗が抑制されている可能性を突き止めた。

11(技術資料)軽量化とCO₂削減に貢献する薄板超ハイテン製品

P.51 福本幸司・内藤純也・白木厚寛・二村裕一・小林 学・吉野初美

【要旨】
地球環境保護の観点で温室効果ガス (GHG:Green House Gas) 排出量削減を目的とした自動車の燃費規制が各国で強化されている。自動車の燃費向上には車体軽量化が有効であるが,同時に衝突安全基準対応への要求も高まっており,より超高強度を有する鋼板や部品適用ニーズが高まっている。本稿では,変形抑制部位向け冷延1,470 MPa級マルテンサイト鋼板およびエネルギー吸収部材向け合金化溶融亜鉛めっき(GA)980 MPa級鋼板の特徴について紹介する。そして,これら超ハイテン材適用時の車体軽量化はライフサイクルにおけるGHG排出量削減に大きく寄与することを明らかにした。

12(技術資料)9%Ni鋼板への大入熱溶接適用に向けた検討

P.55 川野晴弥・橋本直樹

【要旨】
脱炭素社会の実現に向け,代替燃料として需要が増加する液化天然ガス(LNG)の貯蔵用タンクには9%Ni鋼が使用されているが,今後数多くの燃料タンクが必要とされる中,その溶接施工効率向上は喫緊の課題である。そこで,舶用燃料タンクの立向溶接施工にエレクトロスラグ溶接を適用した際の溶接熱影響部(HAZ)のじん性改善に向けた課題を抽出し,その改善策を検討した結果,母材へのMo添加およびSi低減が有効であることを見出した。これにより,母材強度・じん性はもとより,大入熱溶接後でも優れたHAZじん性を有する9%Ni鋼の商品化につながる知見を得ることができた。

13(技術資料)液化CO₂ 輸送タンク向け溶接材料

P.58 菊地和幸・徐 培尓・加納 覚・伊藤孝矩・髙嶋康人・名古秀徳

【要旨】
液化CO₂輸送タンクに適した溶接材料開発が求められている。本研究では,低温・低圧仕様向けに,-55℃環境下でじん性を確保し,耐力390 MPa以上を満たす材料を開発した。Ni添加と組織微細化により限界CTOD (Crack Tip Opening Displacement) 0.15 mm以上を達成し,将来の大型化に備え,耐力500 MPa級材料も検討した。また,中温・中圧仕様向けには,PWHT(Post Weld Heat Treatment)後に耐力690 MPa以上,-35℃での良好なCTOD性能を有するTRUSTARCTM LB-80LSRを開発した。

14(技術資料)地上式アンモニアタンク向け低硬度溶接材料

P.64 山口幸祐

【要旨】
アンモニアは化学原料や肥料原料に加え,CO₂を排出しない次世代クリーンエネルギーとして利用拡大が進んでおり,大型貯蔵タンクの需要が急増している。しかし液体アンモニア環境では鋼材に応力腐食割れ(SCC)が発生するリスクがあり,溶接部の硬さ管理が重要である。本稿では,アンモニアタンク向けに開発した低硬度溶接材料を紹介する。フラックス入りワイヤ「TRUSTARC™ DW-K50EA」,横向サブマージアーク溶接用ワイヤ/フラックス「TRUSTARC™ US-50EA/TRUSTARC™ PF-50EA-H」,および配管用TIG溶加材「TRUSTARC™ TGSX1NA」は,-60~-40℃で優れた衝撃性能を有し,低硬度かつ高能率な溶接施工を実現する。これにより,アンモニアタンクの大型化・量産化に対応し,健全性・信頼性向上に寄与する。

15(新製品・新技術)高強度ボロン鋼(15B25M)

P.71 安居尚志

【背景】
 近年,カーボンニュートラルの実現に向け,製造工程のCO₂削減のニーズが高まっている。例えば,締結部品であるボルトは,冷間圧造によって形状を成形し,その後の焼入れ焼戻しにより所定の強度に調整するのが一般的である。冷間圧造時の成形性や金型寿命の観点から,通常は軟化焼鈍が施されるが,近年ではこの熱処理工程を省略可能な鋼材への要求が高まっている。当社では,軟化焼鈍省略可能な高強度ボロン鋼15B25Mを開発,商品化している。(続きは左上のダウンロード)

16(新製品・新技術)自動車難成形部品向け高成形性アルミニウムパネル材

P.72 秋吉竜太郎

【冒頭】
 燃費向上や走行性能向上を目的に,鉄鋼材料比で軽量なアルミニウム合金の自動車部品への適用が進められている。フードやドアといった外板部品向けのアルミニウム合金として,塗装焼付硬化性(ベークハード性)や表面品質に優れる6000系(Al-Mg-Si)合金が一般に用いられているが,鉄鋼材料と比較し成形性に劣るため,サイドパネルなど複雑形状を有する部品への適用は非常に少ない。当社では,これら難成形部位にも適用可能で,車体重量軽量化にも貢献する合金として,合金成分や熱処理条件の最適化により成形性を高めたアルミニウムパネル材を開発した。(続きは左上のダウンロード)

17(新製品・新技術)純鉄系軟磁性材料“ELCH2”,“KELMOS”

P.72 笠井信吾・川嶋慎也

【冒頭】
 軟磁性材料は電磁力を強める鉄心材として使用され,鉄心に働く電磁力と,その応答性に影響を与える。電磁力は軟磁性材料の磁束密度が大きいほど,応答性は保磁力が低いほど,良好となる。(続きは左上のダウンロード)

18(新製品・新技術)純鉄系軟磁性材料“ELAC”シリーズ

P.73 笠井信吾

【冒頭】
 電磁部品に対する要求の多様化,高度化に応えるには軟磁性材料の高性能化が不可欠である。当社のELAC(Electromagnetic wire rod for AC application)シリーズは,ELCH2をベースに鋼材成分を適正化し,磁気特性や鍛造性を確保しつつ電気抵抗率を高めた開発鋼である。材料の電気抵抗率を高めることで,交流磁界における渦電流を抑制でき,磁場の変化に対する応答性を高めることができる。(続きは左上のダウンロード)

19(新製品・新技術)磁性鉄粉“マグメル®”

P.73 笠井信吾・鈴木浩則

【冒頭】
 電磁部品の小型化・高効率化に貢献できる磁性材料として,圧粉磁心が注目されている。圧粉磁心は粉末を圧縮成形して製造されるため,積層コアと比べて異方性がなく,形状自由度が高い。(続きは左上のダウンロード)

転載許可について

弊誌掲載記事の転載をご希望される際、下記の『転載許可願い』をご使用ください。
(フォームフィールドに入力可能なPDF文書です)

技報を探す