R&D神戸製鋼技報

Vol.74, No.1 / Jun. 2025 通巻第252号

Online edition:ISSN 2188-9013
Print edition:ISSN 0373-8868

特集:お客様の「つくる」に寄り添うKOBELCOの機械装置

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目次

01(巻頭言)お客様の「つくる」に寄り添うKOBELCOの機械装置特集の発刊にあたって

P.01 猿丸正悟

【冒頭】
 当社の機械事業は,1915年に往復動圧縮機の製造に端を発して以来,既に110年の歴史を有している。
この長い歴史の中で,常にお客様の多様な「つくる」という本質的な課題に寄り添い,独自の機械装置を通してお客様に価値ある解決策を提供してきた。
今日まで,このことによりお客様の信頼を獲得し,産業や社会のインフラを支え,人々のより良い日常の実現に貢献してきたと自負している。(続きは左上のダウンロード)

02(概説)お客様の「より良い製品をつくる」に寄り添うKOBELCOの機械装置

P.02  天野靖士

【冒頭】
 当社の機械事業は1915年に国産初の往復動式圧縮機を製造して以来,幅広い製品メニューを有する産業機械メーカへと成長してきた。
長い歴史の中でお客様の創造活動に共感し,社会課題の解決に挑むパートナーとして,お客様の「より良い製品をつくる」に寄り添う機械を提供することで産業界の発展に貢献している。(続きは左上のダウンロード)

03(技術資料)無給油式スクリュ圧縮機用サイレンサの設計技術

P.03  青山新輔・林 雅人・高木秀剛・菊池政寛・山極伊知郎・片岡保人

カーボンニュートラルの実現に向け,自然エネルギー由来の電力を活用した環境関連設備の需要拡大が見込まれており,自然エネルギーを活用するために生じる設備の負荷変動に対応できる圧縮機が求められている。無給油式スクリュ圧縮機は,可変速駆動を適用することで,環境関連設備の負荷変動や風量調節・動力削減に対応することができる。しかしながら,可変速駆動によって,圧力脈動が特定の周波数だけでなく,広帯域の周波数で発生するため,対策が難しく,振動・騒音の原因となる。本稿では,無給油式スクリュ圧縮機の圧力脈動,サイレンサの構成要素の原理と特性,およびサイレンサの設計技術について述べるとともに,広帯域で減音性能を発揮する無給油式スクリュ圧縮機用サイレンサの開発について紹介する。

04(解説)市場で高まるターボ圧縮機大型化のニーズに対する当社の取り組み

P.7 今藤雄一・志賀 司・豊田祥寛

近年,各種プラントの大型化が図られる中で,圧縮機をはじめとする基幹設備に対しても大型化が求められている。当社は,EO/EG(エチレンオキサイド/エチレングリコール)およびPDH(プロパン脱水素)などの石油・石油化学プラントの分野や,従来からターボ圧縮機の主要用途である空気分離の分野において,圧縮機の大型化や高効率化を求めるお客様の声に寄り添い,そのニーズに応えるべく取り組みを行っている。本稿では,それらの内容について解説する。

05(技術資料)新型オイルフリースクリュ圧縮機「Emeraude-ALE™」ALE Ⅳシリーズ 55~120 kWの紹介

P.13 木内 優

近年,世界的に一層の省エネルギー化,低炭素化の機運が高まっている。コベルコ・コンプレッサ(株)では従来から省エネルギー性を重視したオイルフリースクリュ圧縮機ALEシリーズを販売してきており,このたび,ALE Ⅳシリーズの55~120 kW機を開発した。従来機と比較し,高効率モータの採用や圧力損失低減などの省エネルギー性の向上に加え,インバータ機のラインアップ拡充,ドライヤ内蔵モデルなどのユーザビリティの向上を実現した。本稿では,今回開発した圧縮機の主な特徴と技術について紹介する。

06(論文)ジャーナル軸受とラビリンスシールの性能評価プラットフォームの開発

P.17 馬場祥孝・安倍慎一郎・森中俊輔

ターボ圧縮機やスクリュ圧縮機に使用されるジャーナル軸受とラビリンスシールは回転機械が所定の性能と安定した運転を実現するために必要となる重要機械要素である。そのため,設計段階でその性能(静特性と動特性)を正確に予測する必要がある。当社は,実験と解析技術を組み合わせたジャーナル軸受とラビリンスシールの性能評価プラットフォームを開発し,製品設計と技術開発に活用している。このプラットフォームは,CFDなどの高度解析技術の利用だけでなく,サロゲートモデルを用いた軸受性能計算機能や一次元シール性能計算ツールが含まれており,計算コストを削減しながら高精度な性能予測を実現し,圧縮機の信頼性向上と,設計および開発業務の効率化に貢献している。

07(技術資料)新型大型樹脂混練機LCM-620IM

P.22 山口和郎

ポリエチレン樹脂用連続混練機LCM™の史上最大サイズLCM-620IMを開発し,2024年に初号機を出荷した。この装置は,100 t/h以上の生産能力を持ち生産効率を向上させると同時に,かみ合いロータ技術を初めて商用機に適用することで,従来機に比べ12%小さい消費エネルギーで同等もしくはそれ以上の混練性能を達成した。年々増加するポリオレフィン生産量に対応し,混練性能や生産能力を高めることで,CO₂排出の低減に寄与し,カーボンニュートラル社会の実現に貢献している。また,別のお客様からもLCM-560IMを受注しており,かみ合いロータ技術は高い評価を得ている。

08(技術資料)ゴム混練機BBミキサの耐腐食・耐摩耗材料開発

P.26 濱田 光

本稿では,BBミキサの耐腐食・耐摩耗材料について紹介する。混練される材料の変化に伴い,混練室の内面部品(ケーシング、ロータなど)において,従来の摩耗の状況とは異なる,腐食が原因と考えられる表面被覆材料の早期減肉が見られるようになってきた。腐食の問題を解決し,耐摩耗性も両立すべく開発した材料KA#T1,KA#93について,耐腐食性能・耐摩耗性能・クロムめっき密着性能を評価した結果,従来の材料と比較して非常に優れた性能を有することを確認した。開発材料を使用したBBミキサは,多くのお客様にご使用いただき,高評価を得ている。

09(解説)ゴム混練機用新標準制御システムの開発

P.30 橋本竜馬・牟礼祥一

PCベースの新たな標準制御システムBBMC(BB mixer Monitor & Controller)を開発した。BBMCは,従来システムが抱えていたデータ処理能力の限界やソフトウェア管理の複雑さを克服することを目的に開発されたものである。
BBMCは,進歩の著しいデジタル技術の活用を視野に入れ,多機能化を実現している。すでに多くのお客様に採用されており,今後もお客様ニーズの拡大が見込まれる。これらのニーズに迅速かつ柔軟に対応することで,ゴム混練機の付加価値向上を図り,さらにはお客様満足度の向上を目指していく。

10(技術資料)製鉄・非鉄用圧延設備における近年の事例紹介

P.35 黒田直行・細川晴行・前田 剛・赤川正憲・宮園太介

機械事業部門のメニューである圧延機やその上流側や下流側の設備の設計では,各お客様の操業ノウハウや様々なニーズに,真摯に向き合い具現化していく必要がある。本稿では鉄鋼用圧延設備において,操業停止期間を最短化するための工事期間の最短化の工夫,老朽化更新時の省エネ設備の提案,さらにお客様が希望する設備仕様に応えてきた事例を紹介した。また非鉄の箔圧延機では,箔の自動形状制御の高精度化ニーズに対し,制御モデルを非線形に改良し,熟練オペレータの制御修正ノウハウを機械学習させアクチュエータのプリセット精度を向上させることで,定常部の平坦度が約10%改善し,先端形状の修正時間が半減した事例を紹介した。

キーワード

圧延機棒鋼線材多段圧延機シャーKTミル機械学習AI

11(概説)お客様の「より良い環境をつくる」に寄り添うKOBELCOの機械装置

P.40 入谷一夫

【冒頭】
 今,気候変動をはじめとする地球規模での環境問題に対し,国際社会は脱炭素化への流れを加速させている。2020年10月,日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。2022年10月までに,150以上の国と地域が,2050年などの年限付きのカーボンニュートラルの実現を表明した。産業革命以前からの世界の平均気温上昇を1.5℃までに抑えるため,再生可能エネルギーや水素,アンモニアなどの非化石エネルギーなどへのエネルギー転換をはじめとする様々な技術革新とその社会展開が急務となっている。(続きは左上のダウンロード)

12(解説)「ハイブリッド型水素ガス供給システム」によるボイラ・工業炉での水素利活用

P.41 今用浩司・田中孝二・香川公伸・松岡 亮・村上和希・藤澤彰利

脱炭素手段としてCO₂フリー水素が注目されている。水素社会への過渡期において,大規模な水素供給インフラが整備されるまでは,オンサイトで再エネ電力を使って水素を製造し,その場で利用する「地産地消型の水素利活用」が現実的である。しかし,再エネ電力は安定確保に課題がある。そこで,当社では安定した水素供給を実現するため,「再エネ電力由来の水素」と「貯蔵した液体水素」の二つの水素供給源を併せ持った「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の開発, 実証を進めている。
また,水素を利用する設備においては,既存設備の大規模な改造や更新を行うのではなく,既存設備を最大限活用しながら燃料転換することが現実的である。
このように水素社会への過渡期においては,水素の供給側と利用側の双方の視点で現実的な水素供給・利用の始め方を考えていくことが重要であり,当社高砂製作所において,水素の製造, 供給から,ボイラおよび加熱炉での水素利用までの一連の実証を進めることで,水素社会実現への貢献を目指している。

13(解説)HHOGユーティリティレス機「オールインプラン」の開発

P.50 髙雄 悟・中尾末貴

2050年カーボンニュートラル達成に向けて,今後,グリーン水素,および水素を製造する水電解装置市場の拡大が予想される中,我が国は水素社会の実現に向けて主に技術面で世界をリードしてきた。(株)神鋼環境ソリューションは,高純度水素発生装置HHOG®を1996年に上市して以来,固体高分子電解質膜を用いる水電解方式として国内最多となる250基以上の納入実績がある。今般,装置の運転に必要なユーティリティを最小限とするオールインプラン機(AP機)を商品化し,2024年10月に一号機をお客様へ納入した。今後もお客様の要望を先取りし,大容量ラインアップの拡充,コストダウンや耐久性向上を継続し,水素エネルギー社会の未来に貢献していく。

14(解説)3タイプの液化水素(LH₂)気化器における実証試験の紹介

P.54 三輪泰健・鈴木朝寛・江頭慎二・東 正高・鶴 慶彦・西村拓己

当社は液化天然ガス(LNG)気化器を利用用途に応じて提案できるよう複数タイプ保有しており,長年培ってきた設計・製作技術を基に液化水素(LH₂)気化器の開発を行っている。
液化水素は-253℃で貯蔵され,LNGより約100℃低い温度で処理する必要があるため,熱交換器としての技術的難易度が高い。そのため,性能計算および熱応力計算の裏付けとして実液での実証試験を行うことで信頼性を確保する必要があると判断し,小型実証機を試作して液化水素を用いた実証試験を遂行中である。
それぞれ特徴の異なる3タイプ(中間媒体式気化器(IFV),オープンラック式気化器(ORV),マイクロチャネル熱交換器(DCHE))の実証試験の現況を報告する。

15(解説)LNG運搬船用圧縮機

P.60 池上祥治・手塚智志

船舶の環境規制対応の必要性から,舶用推進エンジンには,重油以外に天然ガスも燃料として使用できる二元燃料焚(だ)きエンジンが,近年新規建造されるほぼ全てのLNG運搬船で採用されている。低圧(X-DF),高圧(MEGI)の二種類の推進エンジンがあるなか,当社はおのおのに最適な燃料ガス供給用圧縮機を提供している。本稿では,LNG運搬船のLNGタンクから発生するBOG(ボイルオフガス)を利用した推進エンジンへの燃料ガス供給と,余剰BOGの再液化を含めたガス供給システムを概説するとともに,当該用途の油冷式スクリュ圧縮機およびレシプロ圧縮機の特徴を解説した。また,液化水素運搬といったほかの環境用途船舶への技術展開に関する展望を述べた。

16(解説)二酸化炭素回収・貯留および長期エネルギー貯蔵用途向けギア内蔵型遠心圧縮機

P.64 藤岡輝明

近年,社会の環境意識が高まるなか,当社は温室効果ガスの削減を目的とする二酸化炭素回収・貯留(Carbon Capture and Storage:CCS)において回収したCO₂を地下貯留層に圧入する高圧のCO₂圧縮機を開発し,当社工場内でCO₂ガスを用いた超臨界状態での実圧試験を実施した。また,技術開発が期待されている長期エネルギー貯蔵(Long Duration Energy Storage:LDES)における機械式バッテリーシステムの充電用圧縮機は,高温ガスの取り扱いや頻繁に起動・停止を繰り返す運転条件に技術課題がある。当社はこれまでに培った技術やノウハウを組み合わせてこれらの課題解決に取り組んでいる。本稿ではお客様のより良い環境を「つくる」に寄り添う遠心圧縮機の製品開発や技術課題への取り組みについて解説する。

17(技術資料)ノンフロン冷媒採用ヒートポンプチラー

P.71 岡田和人

コベルコ・コンプレッサ(株)における高温水取出スクリュ式ヒートポンプチラーの低GWP冷媒化に向けた技術開発状況と,市場投入したノンフロン冷媒対応機種「HEMⅢ-HR-GNシリーズ」,70℃温水取出機(HEMⅢ-HR70-GN),85℃温水取出機(HEMⅢ-HR85-GN),排熱回収85℃温水取出機(HEMⅢ-HR85W-GN),排熱回収95℃温水取出機(HEMⅢ-HR95WZ-GN)の性能および加熱能力を示し,日本における導入効果として,HEMⅢ-HR85W-GNを事例に,既存のガス炊きボイラからの置き換えに対する,ランニングコストメリット,CO₂排出量削減効果について試算した結果を紹介する。試算の結果,国内導入においては,少なくとも,温度リフト(温水出口温度と熱源水出口温度との差)が60℃以下,加熱COPが3以上となる運用が望ましいことが分かった。

18(概説)「新しい価値をつくる」事業創出への挑戦

P.77 蔭木陽一

【冒頭】
 当社において,素材・機械・電力の3本柱という言葉を使い始めたのは,2016年に発表した「2016~2020年度グループ中期経営計画」からである。素材系事業・機械系事業・ 電力事業の3本柱による成長戦略を一層深化させ,盤石な事業体を確立させることを志向してスタートした。過去より複合経営を標榜していたものの,素材系中心に陥りがちであった当社の思考ベクトルから,各事業部門のアイデンティティと責任が明確となり,馴れ合いではない切磋琢磨の意識や思考が芽生えてきたように感じる。(続きは左上のダウンロード)

19(解説)ボトムアップ型新事業創出の枠組み構築~カンブリアプロジェクト~

P.78 倉田和也

産業と消費の転換期を迎えるなか,近年多くの企業が,様々な方法で既存事業に代わる新事業の創出を進めている。重工・機械メーカにとっての新事業では多額の開発や設備投資をともなう例も多く,既存の技術やサプライチェーン,情報など幅広く資産への認識を深めることとそれらの活用が有効とされる。また価値の多様化や相互連携化が進むなか,市場変化へ追従するには,従来までの自前主義から脱却し協業や共創することが必要となる。本稿では,事業創出のため,資産の認知と活用そしてオープンイノベーション促進の手段採用に至った経緯とそれらの有効性,さらなる今後の展望について述べる。

20(技術資料)全固体電池製造プロセスへの適用に向けた高温高圧WIP装置の開発

P.82 伊藤洋行・林 和志・ポンチャイシリグン ナタナピン

全固体電池の製造プロセスにおいて,電極活物質/電解質の界面形成のために加圧処理が行われている。WIP(Warm Isostatic Pressing)技術は,高温かつ高圧状態で等方的に被処理物を加圧できることから,その加圧処理工程への適用が期待される。当社では,WIP技術が全固体電池製造プロセスに採用されることを目指し,WIP技術を用いた全固体電池電極の高密度化に関する研究を行うとともに,より高温下でWIP処理できる装置の開発に取り組んでいる。今回,高温高圧下でWIP処理を行うことにより,良好な電極界面が得られることを明らかにした。さらに,WIP装置の高圧配管内部の圧力媒体を加熱することで,圧力容器内で発生する温度分布のバラツキを改善できた。本稿では,それらの研究および装置開発の成果について紹介する。

21(論文)新AIP蒸発源によるAlCrN硬質皮膜の特性と実金型での評価

P.86 谷藤信一・中村 克・久次米 進・石川剛史

環境問題への関心の高まりから,金型加工においてはオイルレス化や冷間加工が増えつつあり,使用環境は年々厳しくなっている。金型の長寿命化のために,AIP(陰極真空アーク)法によって金型表面を金属窒化物で被覆することが行われ,高い硬さが要求されることからAlCrN皮膜がよく用いられる。また,コーティングの特性は成膜プロセスに用いられる蒸発源の特性に大きく影響される。本稿では,新しい蒸発源(以下,μ-ARCという)を用いて,成膜条件とAl含有率を変化させて成膜したAlCrN皮膜の特性を評価するとともに,当該コーティングを被覆した超硬パンチを冷間鍛造加工に供して評価した。μ-ARCで成膜したAlCrN皮膜は,高Al含有率での立方晶構造形成と優れた平滑性が得られ,卓越した耐久性を示した。加えて,往復しゅう動試験を行い,金型加工の試験結果をトライボロジーの観点から考察した。

22(技術資料)三次元磁極構造を用いた船舶向け低速大電磁力直動電動機の設計技術

P.94 林 俊平

船舶電動化に適した高電磁力密度特性を有する当社の独自三次元磁極構造を用いた電動機と,その設計技術について具体的な事例を挙げて紹介する。高電磁力密度を指向した設計事例では平板型の直動電動機において,質量当たりの電磁力が従来比約3倍まで向上する結果を得ている。またシステム全体の小型化に向けて低銅損を志向した設計事例では,モータ定数二乗密度を指標として最適化した結果を紹介している。これら当社が保有する三次元磁極構造を用いた電動機設計技術を用いて,船舶向け駆動装置の電動化適用範囲拡大に貢献していく。

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